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2019年03月22日(火)

共同養育・面会交流支援について

政策の中に「共同養育・面会交流支援」を挙げています。

当事者以外の方にとってはあまり馴染みのない分野だと思いますので、少し説明させていただければと思います。

 

私は、これまで弁護士として活動してきましたが、離婚の相談を受けることも少なくありませんでした。

その中に、配偶者が子どもを連れて別居し、子どもに会わせてもらえなくなったという種類の相談があります。

この相談は弁護士としても極めて辛いものになります(当然遥かに辛いのは相談者です)。

実務に沿った回答をすると言葉を失われる方、泣き崩れる方もいらっしゃいます。

 

現在の裁判実務では、別居時に配偶者に子どもを連れて行かれてしまうと、その後子どもを連れ戻すことは極めて困難です。

逆に連れて行かれた子どもを直接連れ戻すと成年者略取に問われる可能性があります。

 

一方、子どもと会うために面会交流調停・審判というものがありますが、

子どもと一緒に暮らしている親(以下「同居親」と書きます)が拒否姿勢を固めると

離れ離れで暮らしている親(以下「別居親」と書きます)が子どもと十分に会う機会を得ることは容易ではありません。

同居親の行方が分からなくなってしまうと、調停自体が困難です。

また、会う頻度も、裁判実務上月1回程度が相場といわれていますが、

仮に一旦調停や審判で決まったとしても「予定が合わない」「忙しい」

等の理由で決まったことが履行されないことがあります。

年単位で子どもに会えていない別居親がいます。

 

保育園や小学校のイベントへの参加を拒否されることもあります。

調停の場で運動会に行かせて欲しいと調停委員に話すと

「まだ配偶者の心の整理が...」「もう少し落ち着いてから...」

などと拒まれることも少なくありません。

また、子どもの成績、健康状態を学校に問い合わせても拒まれることもあります。

離婚前で別居親にも親権があったとしても、です。

 

この問題が極めて残酷であるのは、子育てに積極的であった別居親ほど不幸になるという点です。

ある日保育園に迎えに行くと、保育士から配偶者が先に迎えに来たと言われる。

家に帰ると配偶者と子どもの物が無くなっている。

それから数ヶ月、あるいは年単位で子どもに会えなくなってしまう。

小さな子どもは毎日のように成長します。

その成長の過程に関与する機会がある日を境に奪われてしまう。

これはどれ程絶望的な状況でしょうか。

夫婦関係と親子関係は別問題であるはずです。

 

この問題に触れると、児童虐待・DV懸念について主張されることがあります。

また、養育費の不履行率の問題について主張されることがあります。

これらの懸念・問題は勿論重要です。法改正、制度変更が必要と私も考えます。

私自身、同居親側の代理人を務めることがありますが、身勝手・無責任な別居親に憤慨することはあります。

しかし、私の友人や依頼者達は、(少なくとも証拠上)そういった懸念・問題がないのに上記の状況に置かれています。

彼らに対して、司法立法行政は、無視を決め込んでよいのでしょうか?

私はそうは思いません。

 

このような話をすると子どもの視点を無視していると批判されることもあります。

しかし、そのような批判をするのであれば、

児童虐待・DV懸念がない別居親と子どもを十分に会わせない、

別居時の転校等により子の環境を変えてしまうことの妥当性についても

詳細に検証しなければ公平ではないのではないでしょうか。

現在の裁判実務では、別居時の子の環境変化の妥当性はほとんど問題視されません。

よく子どもを置いていくのは育児放棄になるから連れて行かざるを得なかったんだという主張がなされますが、

私が見た事案の中には、むしろ別居親側が育児を主に担当していたのに、

裁判所にその事実をほとんど考慮されなかったというものがあります。

子どもがもっと別居親と会いたいと言っているのに会えないケースがあります。

子どもが運動会や発表会を見に来てと言っているのにそれが叶わないケースがあります。

 

子どもの視点という点では、私自身親が離婚しており、学生時代その情報を自己開示していたところ

親の離婚を経験した友人知人から相談を受ける機会が多くありました。

彼らの中には、離婚の事実自体よりも離婚前後の両親の喧嘩、

一方の親による(同居親・別居親問いません)他方親に対する誹謗中傷を聞かされたことなどで

心に傷を負っている人も少なくありませんでした。

この点からすれば、親に対する離婚時の子どもの心理に関するガイダンスや

親や子どものカウンセリング支援などが必要と考えています。

 

我が国も批准している子どもの権利条約第9条3項には、

「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、

父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも

人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」

という文言があります。

また、G7加盟国中、離婚後の共同親権を認めていないのは我が国だけです。

正当な理由なく配偶者の同意のなしに子どもを連れて別居することを違法としている国も少なくありません。

 

この問題に対する論点は、

離婚後共同親権、正当事由なき子連れ別居の違法化、虚偽DV問題、親権(監護権)判断基準の法定化等様々です。

児童虐待・DV事案等クリアすべき課題も少なくありません。

ただ、現行制度、運用が「児童の最善の利益」に適っているとは思えません。

何とか、児童虐待・DV懸念のない場合に、子が両親から十分な愛情・養育を受けられる(金銭面も含みます)環境整備に取り組めないかと考えています。

離婚後共同親権等は国政レベルですが、行政による面会交流支援、子の心のケア等は区議レベルでも提案可能です。

以上のような想いがあり、政策の一つとして「共同養育・面会交流支援」を掲げさせていただいています。